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「マイナスの使い魔」の記事一覧

マイナスの使い魔 第三十一敗『虚無だなんて!』

 長い黒髪に漆黒のマントと陰湿さを漂わせる暗い顔付きの男、ミスタ・ギトーは教師の中でも生徒達からの人気は取り分け低い部類に入る男である。

「全員揃っているな。では授業を始める。君らも知っての通り、私の二つ名は『疾風』。疾風のギトーと呼ばれている」

 それは彼生来の陰湿な性分と、そのくせ人一倍強いプライドが起因していた。
 最初の自己紹介と地続きで投げられた質問からもありありと伝わってくる。

「最強の系統とは何か、知っているかねミス・ツェルプストー」

 つまらない男だとキュルケは内心で嘆息した。
 大方プライドの高いキュルケなら火だと答えると思っているのだろう。
 ギトーの目的は彼女を挑発して自分との力の差を見せつけて風属性の優位性を示すことだ。文字通り、話の火種にしようと企んでいる。
 確かに、自分は誰より特別だと思っていたかつての自分なら、そう答えただろうと思う。

 しかし禊と関わったキュルケは、嫌というほど自分の弱さを知った。
 自分と並び立つ力量だと思っていた風の使い手タバサは、戦術面でキュルケを大きく上回っていた。
 しかもそのタバサが戦略を立てて二人がかりで挑んだ禊との戦いでは、あえなく螺旋伏せられて挙げ句には殺されかけている。
 フーケのゴーレムを相手にした時も、ひたすら逃げ回り禊の助けなしでは撃退できなかった。

 わたしは強い。そういう自負は今もある。
 だが上には上がいるし、下にも上がいた。
 ギトーは風のスクエアだ。同じトライアングルですらフーケのように勝てない相手がいるのだから、ランクの差はそのままメイジとして埋められない差となる。

 勝てない相手に退くことは恥ではない。
 そして勝てない相手であっても倒す方法を、弱さが強さの上に立つ戦略を、彼女は学んだ

マイナスの使い魔 第三十敗『たった一人の人外だよ』

 フーケは場末の酒場で一杯やっていた己の油断を恥じた。
 ガヤガヤと酒を帯びた男達の騒ぎ声がやかましい。こんな場所に若い女が一人呑みなぞしていると、酌をさせあわよくばそのまま宿に連れ込もうとする輩がよく現れる。
 彼女は既に二人ほどそれをあしらった後だった。
 なので、今テーブルに腰掛けている相手は三人目、正確には三組目になる。
 仮面を被り素顔の見えない男と暗い双眸をした黒髪の男の二人組だった。

 この二人は他の者達は明らかに違った雰囲気で、フーケの元に現れた。
 そして単刀直入に彼女の名を呼んだ。マチルダ・サウスゴーダと。

マイナスの使い魔 第二十九敗『お話にならない』

 穏やかな水面に太陽の光が反射しきらめく。うららかな午後の陽射しが心地よい小舟の中。
 けれども差し込む光さえ拒否するように、その中で縮こまって丸くなっている少女がいる。彼女――ルイズの心には大雨が降っていた。

 今の彼女ではなくもっと幼い頃のルイズであり、記憶の前後が曖昧でつぎはぎのような世界。つまりは夢の中である。

 幼い頃、姉妹と比べて魔法の出来が悪く母親に叱られて逃げ出したルイズは、よくここで泣いていた。
 かつての母親は名高い騎士であり、姉二人はその才能を継いで優秀なメイジなので風当たりの強さは殊更である。
 母親の苛烈さはそれこそ彼女の二つ名である烈風の如しであり、ルイズに輪をかけて強かったのも災いした。

マイナスの使い魔 第二十八敗『今日から僕達が』

 それがよもや、こんなことだったとは。  ルイズを殺さない程度に痛めつけて動けないようにする。  そこへ禊が現れてフーケを捕まえる芝居をしながら逆に逃走させ、あのプライドの高い貴族を自分側に引き込む。というのが禊の算段だ・・・

マイナスの使い魔 第二十七敗『人間は人間だよ?』

 今やトリステイン学院では知らぬ者がいない希代の大盗賊フーケの潜伏場所は、しかしその学院から十分とかからない小さな林の中だった。  日は陰り夕闇で視界は悪くなっている時間帯ではあるが、それがどれだけ危険な行為であるかの問・・・

マイナスの使い魔 第二十六敗『元の世界に戻りたい』

 ルイズの一撃で上半身が大きく消し飛んだゴーレムは、しかし歩みを止めない。  さらにタバサからエア・ハンマーの直撃を受け、残った下半身を木に打ち付けられる。ぶつかった衝撃で体が弾けてべっとりと泥の跡が木にこびりつけせて、・・・

マイナスの使い魔 第二十五敗「わたしの人生は」

 キュルケが怒り心頭で、感情に任せて禊を怒鳴りつける。いつもの自信に満ちて余裕を見せる彼女の姿は微塵もなかった。 「ふざけたこと言ってるんじゃないわよ!」  こんなキュルケは初めて見る。フーケの追跡だって最初に志願したの・・・

マイナスの使い魔 第二十四敗『白状するよ』

 安心院さんって誰よ? なんて、無駄な問答を交わす余裕もキュルケからは消え去っている。辛うじて『さっさと説明なさいな』という視線を送り、続きを促すのがやっとだ。 『僕の言う通り、破壊の杖を操作してね』  どうして禊がこれ・・・

マイナスの使い魔 第二十三敗『安心院さんの言葉を』

 馬車は薄暗い森の中で止まり、そこからは徒歩で目的地を目指すことになった。  その道中、ルイズは何とはなしに、昔家族で森にピクニックへやって来たことを思い出していた。  珍しく家族全員が揃っていたことと、その後一人で森の・・・

マイナスの使い魔 第二十二敗『僕が行かねば誰が行く』

 禊と関わるようになって教師に囲まれることが増えたわね、とルイズは思っていた。  禊がトリステイン学院へ盗賊が襲撃したことを報告し現場はまさに大混乱となり、夜が明けてすぐ事件に関わった生徒達への事情聴取が行われたのだ。 ・・・

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