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緋色の平穏 Ep10『極彩の殉教者2』

俺は美羽の元へ走り寄る。本郷の命より、美羽のかすり傷だ。自称ヒーローは生死のレベルで興味の対象外である。
「巨大ロボが二体揃って噛ませ犬とは、世知辛いインフレね」
「片方は、少し前にお前が直接乗ってたしな。しかも噛ませ犬で」
「私は過去に縛られない美少女なのよ」
「過去もだけど、何よりお前は性別に縛られろ!」
というかしっかり縛られているはずなんだけど。さらりと男女の壁を超越するなよ。
俺より先に球太郎頭部にたどり着いた鏡が、外側からハッチを開けて、麗しい美少女を拾い上げた。さっきまでの軽いノリが美羽救出後からも変化がないため、美羽は無事なのだと悟る。
「きゅうー」
……これは身体を張った美羽たんのギャグだろうか? 可愛いから素晴らしい!
それはさておき、困ったことに美羽まで目を回してしまい動けそうにない。うちの僧侶は守備力紙だからなあ。やはり回復はシャマルさんに頼るしかないな。
「持ってなさい」
鏡から美羽をパスされてしまった。これで両手に幼い少女というマーヴェラスだけれど、どちらも行動不能のステータス異常が付加されている。ボール封入型怪物ゲームなら瀕死状態であり、フェイトはリアルで瀕死だけれど。これはもう俺に襲えと?
「おいおい、これじゃ俺が」
「あんたは尻尾三人分巻きまくりながら、根性出して逃げ回りなさいな」
臆病風に吹かれながら根性出せとは、また難題を提出されてしまったな。案外いつもやってる気がするのは気のせいだ。うんきっと。
そんな管理局の緊迫感を無視したやり取りをしていると、アンノウンの左右に新しい通常サイズの扉が二つ。開いた先にはドアの型と同じ長方形の鉄塊がそれぞれ地面を揺らした。あのロボズをあそこまで圧縮したというのか?
「わわわわ私のダイセイオーがあああ!?」
なのはとはやてに助けられながら、ハッチより這い出てきた本郷が涙目で喚いてる。きっと戯れ言なので無視してしまおう。それより、あいつ気絶する前にほぼ戦闘不能じゃないか。なんたる役立たず。
「この私に喧嘩を売り、尚且つ美羽をミートパイにしようだなんて、良ぃぃい度胸してるじゃない」
舌舐めずりしながら、クレイジーディザイアを肩に置き、鏡は強烈な笑みを張り付かせる。
「殺したくなってきたわ」
鏡を鏡たらしめる、純粋な殺意を露見させた笑顔。獰猛な肉食獣が牙を剥き出しにするような笑みで、アンノウンを睨む。
「潰れろお!」
しかし奮迅の雄叫びが上がったのは、鏡ではなくアンノウンの背後からだった。
己を覆う影に感付いたアンノウンは後方を警戒するが、その行為はとっくに手遅れだ。フェイトが重傷を追い激昂したアルフが、四輪駆動の鉄塊を叩き落とす。
あれはそう、俺にも見覚えがあった。
「私のソイオウカーまでが! それも味方に!」
良かったじゃないか、正義を全うするための殉職だよ。まさに本望だろ?
「待てアルフ!」
「うりゃあああ!」
クロノが飛ばした制止の声は、盛大な破砕音に比べればあまりにちっぽけだった。
それでもまだ、アルフは渾身の力でセイオーカーを打撃し、破壊を追加する。
叩く。
叩く。
叩いて叩く。
「先越されちゃうなんてね。やるじゃないあの駄犬」
「無駄吠えだけどな」と、俺がアンサーを返すより先に、抑止の効かぬ衝動に身を任せ鏡は飛び出していた。破壊者の標的は、扉によってセイオーカーから抜け出ていたアンノウンだ。
「売った殺し合いは、高価買取りしたげるわ!」
衝撃。
打ち下ろすデバイスは空を切り、アンノウンの扉から放たれた魔力砲撃が鏡を横殴りした。
「ちぃっ」
激しく横転して地へ叩きつけられながらも、舌打ち一つで鏡は直ぐ様に立ち上がり、狩りを再開する。効いてはいるだろうが死に至る威力からは遠い。あれは非殺傷設定なのか?
「スティンガーレイ」
鏡を停めても、こちらの攻勢は滞りはしない。鏡の襲撃が失敗するや否や、クロノが魔力弾の群を展開し高速にてアンノウンを射撃する。
アンノウンは屋上から離れ宙を舞い、ここで初めて自らが動き回避行動を起こした。
逃げに回りはしたが回避に徹しているわけでもなく、扉を使用した全方位どこからでも放てる砲撃にて反撃の力を行使していく。
それでいい。こちらの攻め手は、クロノだけではない。
「逃がすかあ!」
狼へと変態した使い魔と守護獣が牙を剥き出しに襲いかかり、
「砕けなさいな」
道化は平常に狂って、ギターを振り回す。
執念は途切れず、より垂涎の獲物を求めて激しさを増していくのだ。
だけど、やはりそれもアンノウンには想定事項なのだろう。突貫する進路上に、あるいは死角から扉が出現し、魔力による狙撃が二人を阻む。
数々の猛攻を振り切り、アンノウンが飛ぶ。
魔力と爆発が交差する度に、扉の数も増加していく。
それでも自身が扉へと飛び込まないのは、自分を囮に迎撃するつもりなのか。だとするならば、それは愚策だ。
突如アンノウンの肉体は停止する。だがそれは本人の意思による動作ではなく、奴の腕には青白い環状の魔力帯が展開しており、見るからにアンノウン動きを阻害していた。クロノの仕掛けていたバインドが発現したのだ。
「チェーンバインド!」
脱出の時間すら与えず、続いてアルフが魔力の鎖にてアンノウンをがんじがらめに縛り上げる。
先より強固に、決して逃がしはしまいと。
「よし、今だ!」
「高町なのは行きます!」
クロノが魔力弾の牽制とバインドの設置を行いつつ、鏡とアルフが目眩ましに攻める。一度捕まえたなら、ザフィーラが徹底的に拘束し、なのはが大型砲撃で一気に潰す。
この戦術の発案と主導の実行者はクロノである。まさに現実的でかつ、戦闘経験の少ない相手には対応しにくい正攻法の戦術だ。
鏡がつまんなそうにしてるけど。そこは我慢なさい。
「ACS展開」
レイジングハートにカートリッジが数度叩き込まれ、一時的に魔力が爆発的な上昇を見せた。
推進力を与える桜光のウィングが展開されて、魔導師の杖は魔力の砲台から、敵を穿つ槍となり変わる。
突撃。
「扉を使い射撃魔法を無力化するなら、零距離で撃てばいい」
それがクロノの導き出した、即席の対次元連結対策だ。
身動きを封じられかつ敵の脅威に晒されたアンノウンのアクションは、それでも、まるでこれまでと変わりはしなかった。
ここに来ても発動される魔法は扉だ。
「どうして!」
どうして、扉がアンノウンの図上に設置されたのか。
アンノウンに対して思わず疑問を発したのはシャマルであった。
想定外の次手を打たれても、なのはは速度を緩めない。むしろ下手な迷いの緩手を振り払うように加速していく。
しかし、先に行動を完了させたのはアンノウンだった。アンノウン本人ではなく、扉が下方にスライドして自身を異空間へと連れ去る。
なのはの射線に残るは、バインドからの脱出と同時に生まれていた、もう一つの扉。それもアンノウンの逃亡時より二回りは大きい。
「くうっ!」
加速の代償に停止の効かないなのはを前に、扉が開く。その内から襲いかかるのは、藍色の膨大な魔力砲撃だ。ここまでの火力を、あいつは保有していたのか。
目標のロストに、次いで凶悪なカウンター。
通常なら突撃者の自爆で終わってしまう間違いなく窮地であろう。しかしあの砲撃手のエースが、ただ撃たれて終わるわけもない。
Sクラスに達しているとも思われる直射に晒されたなのはは、それに対応して自分の魔力を直接叩きつけた。
「エクセリオンバスター!」
魔力達は互いにぶつかり合い、流れ出す力の奔流と拮抗が生じる。しかしそれは、時間にしてしまえばほんの数秒の出来事に過ぎなかった。
凝縮された桜の光は、嵐の如く荒れ狂い、圧殺するかのように相手を押し潰して、扉の向こうへと追い返したのだ。
「何度見ても恐ろしい魔力砲撃だな」
「あんなのを零距離で撃ち込むつもりだったの? なんてパワー馬鹿の娘っ子よ」
クロノはまだしも、大抵のことでは驚かない鏡までが目を見張る一撃である。それもそのはず、まだ収束魔法という切り札を残してもなお、あの威力なのだから。
「あれこそが高町なのはの真骨頂だな」
「そうね。だけどなのはちゃんの魔法は、負担がとても大きいのも事実だわ」
息の荒いなのはを見つめるシャマルさんには、白き魔法少女の決断と破壊力による感嘆だけでなく、あまりに無茶する幼子に対する医師としての不安も混じっている。
加えて、まだアンノウンの行動は終わっていない。すぐ新たな扉が物理法則を無視して宙を占領し、魔力砲撃が再開される。
アンノウンもまた功勢の再開と共に、戦場へと戻っていた。そこは先の戦闘ポイントからもズレていて、これもまたクロノの予測していた通りだ。
「彼方より来たれ、やどりぎの枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け。石化の槍、ミストルティン!」
恐ろしいまでの対応の早さで、古代ベルカの継承者はやてがアンノウンを中心とし七本の光る槍を撃ち込んだ。
反撃か防御か、アンノウンはいくつも扉を展開するが、それらは発現されるミストルティンの効果により次々と石化していく。
これはアンノウンも想定してなかったのだろう。急ぎ自力で石化から逃れようしたが、選択の間違いと遅れは取り戻せない。
アンノウンはミストルティンの白き光に包まれた。
「どうや!」
「流石ははやてちゃん!」
主の活躍に、その騎士もお喜びなようだ。
なのはの零距離射撃が駄目なら、相手の武器ごと破壊するはやての石化効果を付与した魔法を使う。だがはやての攻めは他と比べて御世辞にも熟練者とは呼べず、仔細の調整も苦手ときている。
「だからこそのエクセリオンバスターを用いた二段構えか。あれから逃げるなら扉の移動になるし、次の出現場所までに時間のかかる大型魔法の準備も可能だからな」
「とにかく、今のはダメージがあったはずよ」
「だといいですけどね」
ミストルティンの光から脱出した敵性は表面のほとんどが石化していた。非殺傷での石化魔法は相手の守りを削ぐことがメインとなる。重要なのは、ここからの畳み掛けだ。
アンノウンはまた距離を録り直し一旦隣接するビルの屋上へ着地する。それを追いかけるのは荒ぶる狼二匹と道化だ。
「っせおおおおい!」
ザフィーラが拘束条にて地面を砕きながら捕縛を仕掛ける。
アンノウンは横っ跳びでそれを避けるが、その先には人型に戻ったアルフが回り込み、純粋な力と圧縮された魔力をも握り込む拳を叩き込んだ。
その衝撃にて、踏ん張る脚が軽く地面をえぐりながらアンノウンが後退し、奴を覆う石がひび割れ崩れる。
「っしゃあ、手応えはあったよ!」
己を覆う隠蔽具を失い、アンノウンの容姿が公にと去れされた。
まず目が奪われるたのは、頭部の全てを占領した巨大な目玉だ。充血して黄色く濁る醜悪な眼球に、付属された短い触手が幾本も垂れている。
その下、身体は無骨な鋼鉄の鎧を着込んでおり、まるで鎧に目玉を乗せているみたいだ。
「気持ち悪!」
真正面から見たアルフが、思わず身を引いてしまうくらいグロテスクさ。アンノウンの下に隠されていたのは、より人から遠ざかる異形な姿だった。
「どうせ変身魔法だろうけど、そういの嫌いじゃないわ!」
妙なシンパシーを感じた狂人は、嬉々として獲物を振りかぶる。その荒々しさは隣の獣達より余程獣だ。
アンノウンはそれを右腕で受け止め、左腕で生み出した扉を開き逃走手段とする。
「途中退席は認めちゃいないわよ」
鏡が逃がさないと前蹴りにて対応するが、またも横合いからの妨害策が、鏡を阻む。
「何よこれ、触手プレイ?」

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