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緋色の平穏 Ep6『独善の剣10』

「皆、ここは拓馬さんの指示に従おう」
 俺への助け船をだしたのは、意外にもユーノ・スクライアだった。ユーノは全員を見渡しながら続きを紡ぐ。
「ユーノ君……?」
「拓馬さんはここにいる誰より鏡さんを知っているんだ。拓馬さんの判断を信じよう」
 こういうのを真っ直ぐな言葉というのだろう。あれ、ユーノにサクラ役頼んだっけ? なんて半ば本気で思考した俺の汚れっぷりがなんともいたたまれない。
「そやね」
「わかったよ、ユーノ」
 ユーノの言葉は、なのは達の心を震わせるのに成功したようだ。
 ようやく少女達の気持ちが打倒ダイセイオーにまとまっていく。こういうのはやはり長く親しい奴がやったほうが効果は大きい。
「そうと決まれば、私達はあのロボットを止めないとだね!」
 不屈の心を持つ小さな魔導師は、力のこもった瞳を独善を原動力とする正義の使者へと向けた。
 本来の操縦者を欠くロボットは、それ故に威風堂々と少女の前にそびえ立つ。
「あたしも行く」
「だからお前は休んでろ。ユーノ」
「うん。妙(たえ)なる響き、光となれ、癒しの円のその内に、鋼の守りを与えたまえ」
 すぐにユーノは俺の意図を汲み取って、ヴィータにごく狭範囲の結界魔法を実行した。こいつ、けっこう補佐に欲しいかもしれない。
 少なくとも自爆しやがった球体より遥かに役立っている。
 防御と回復の両方を可能とする高位魔法である、ラウンドガーダー・エクステンド。
 俺とヴィータが下手に手出ししても、悪影響しか起こらない。
 それならばわずかでも回復に努めさせ、力が必要なその時まで温存させるべきだ。
「なんでこんな大事なときに、あたしは戦えないんだ」
「ヴィータのせいやないよ。ここまで堪えてくれたんやろ? 後はわたし達に任せといてな」
 はやての諭され大人しくはなったが、拳をきつく握り締めてダイセイオーに挑むなのはをずっと見つめている。
 無念と後悔が渦巻き、己の無力を呪う。次があれば一人檻の中ではなく、舞い上がり戦ってみせると瞳が燃えたつ。あれの起爆タイミングをコントロールするのは、俺の仕事だ。
 そしてユーノにもやってもらう仕事がある。
「俺の相棒じゃそこまでは調べられないんでな。頼んだ」
「内容はわかったけど、どうしてこんな事を?」
「悪いが、説明している暇は無くってな」
「わかった。スピードを最優先にするよ」
 そう言ってユーノは、疑うより先に検索魔法を展開していく。
 補助を本領としているからこそ、なすべき作業を誰よりも理解しているのかもしれない。そう思わせる手際の良さだ。
 自分が戦えないからこそ、周りを見ている。
「アクセルシューター!」
 無数の魔力弾がダイセイオーにぶつけられた。直撃しても撃墜はないので殺傷設定で破壊しにかかっている。装甲に物理破壊の痕跡は残るが、気にもとめずアイビームで狙撃。
 それは反撃ではない。ダイセイオーの狙いは、大型魔法の詠唱をしているはやてだから。
 必要の無い反撃はせず、脅威となりえるものを優先して排除している。
「くっ! これじゃあかん。まず攻撃ができへん」
 収束砲撃が当たることはなかったが、はやての魔法は中断を余儀なくされた。
 はやての広範囲魔法はダイセイオー相手にはかなり有効だが、そもそも使えなければ意味は無い。だからこそ優先して潰されている。
「すごく、硬い……」
 なのはも顔負けの理不尽な鉄壁。生半可な攻撃ではあってないようなものと扱われてしまっている。
 人とロボを比べるのもナンセンスな話だが、あれで一定以上のダメージを受ければ自己再生までしてくるのだから、手がつけられない。
「半端な魔法は通用しない。それにパワーも……なら、やはりこれしか」
 フェイトのバリアジャケットからマントが消え、高速型のソニックフォームとなる。
 手に握られたバルディッシュも斧から魔力によって形成された、金色の刃が煌めく大剣となった。
「はあぁ!」
 常人どころか、一流の魔導師でもないと、見切ることはかなわないだろう速度でダイセイオーを旋回し斬りつけ続ける。
 当たれば終わりなら、捉えられない速度で止まらない攻撃を。
 このまま纏わりついていけば、回復しながらでも攻撃を重ねられる。
≪Seitei Thunder≫
 この程度では暴君の王に心変わりは施せないとでも言いたいのか。邪魔者を振り払うかのように、電磁の渦を自身の周囲に発生させた。
 蒼い輝きが周囲にばら撒かれ、近接しているフェイトに電撃の嵐が襲いかかる。
「当たりはしなかった。けど」
 渦に巻き込まれないようフェイトは退避してはいるが、あまりに薄過ぎる装甲は磁力の影響を防ぎきれず、苦悶を浮かべた。
 戦いに支払うリスクの差も酷いもんだ。これでどこまで持たせられるだろうか。やはり最大の敵は時間だな。
「なんて火力なんだ!」
 おそらくはフェイトが紡ごうとしていた続きを、俺の隣で依頼した検知を行うユーノが代弁した。
 一発の重さがあそこまでの魔法は、使用者の負担も決して軽くない。それが人ならば。
 意思が介在しない機械の身体ならば、そんなものは考慮にも入らない。
「かすらなくても焦げたからな」
「あれじゃ戦艦と人が戦っているようなものだよ」
 圧倒的な高火力魔法の連発して、なんたら旅行記よろしく馬鹿馬鹿しいサイズ差で暴れるデカブツ。
 戦艦の説得力はある。その気になればあいつはアースラだって撃墜できるかもしれない。誇張じゃないから困る。
「俺達の仕事は戦艦撃沈させるお膳立てさ。で、進捗はいかほどだい」
「解析しようとはしてるんだけど、プロテクトがかけられているみたいだ」
 スーパーロボットの構造はブラックボックスがお約束ってわけか。だが、はいそうですかと引き下がるわけにはいかない。
 調べがつかない限りは、こちら側にあれを倒すめどが立たないのだ。そういう意味ではユーノの役割は前衛での戦闘より重要なものといえる。
「なんとかぶち破ってくれよ。お前だけが頼りだからな」
「わかってるよ。どうにかやってみてる途中だから」
 俺達のパーティじゃ、これだけの検索系魔法が使用できるのは唯一ユーノだけ。
 こういう事態を想定してメンバーに混ぜられたのだろう。選定者は良い仕事をしてくれた。
「私信じてるから、ユーノ君のこと」
 ユーノに張り切ってもらおうと、なのはっぽく応援してみた。引かれた。
 真面目にやれというヴィータの視線がとても痛い。まだまだ!
「ユーノ君の背中、あったかいなり……」
 なんか混ざった。溜め息吐かれた。
 くそぅ、ショタ要員め。戦闘が終わったら鏡に突きだして女装要員にしてやるからな。
 鏡が生きてればだけど。応答ないんだよなぁ。
「邪魔してんじゃねぇ!」
 ツンデレってデレるから萌え要素としての価値があるのに、ヴィータはツンの割合が高過ぎやしないだろうか。
 はやての向けるデレを、ちょっぴりでいいから俺にも分けて欲しい。
「拓馬さん、フェイトとダイセイオーが!」
「何かでかいのを仕掛ける気みてーだな」
 ダイセイオーがまた身の丈に見合う巨剣を構築し、強化前にも使用していた大技を駆使せんと刃に魔力を溜め込む。
 対するフェイトはバルディッシュを大きいスタンスで構え、迎え撃とうとしている。
「フェイトの奴、全力の斬撃魔法を使う気か」
「あれは中途半端な魔法なら、返り討ちに合うからな。ぶつけるなら全力しかねぇよ」
 全力全開でぶつかりあったヴィータだからこそ、説得力が生まれる。しかもそこまでして、押し切ったのもぎりぎりだった。
 先に仕掛けたのはダイセイオー。蒼く染まった剣からは溢れ出た魔力が粒子となって零れ落ちている。闇の書の防衛システムが張り巡らせた結界の一枚すらも軽く破壊できるだろう一刀。
≪Seitei Zan≫
 ダイセイオーが振り下ろす直前に、フェイトが動いた。
 ザンパーから放たれた衝撃波が、剣を止めた。まともにぶつかり合うのではなく、カウンターで対抗する気だ。
「撃ち抜け、雷神!」
≪Jet Zamber≫
 妨害を受けてスピードが乗りきらず一部魔力を分散されたダイセイオーの剣。
 それにフェイトの大きく伸長した魔力刃がぶつかる。
「これでも、まだ重い……!」
 一機と一人はしばらく拮抗して押し合ったものの、お互い剣の魔力が尽きて相殺で終わった。
 フェイトは刃そのものが破壊されたが、ダイセイオーは剣に収束した魔力が霧散しただけ。低速度で剣そのものは振り抜かれる。
 そうして生じるタイムラグ。つまり隙。
「エクセリオンバスターA.C.S。ドライブ!」
 そこへなのはが攻め込む。砲撃ではなく、突貫でだ。ストライクフレームを展開し、零距離砲撃を敢行する。
 魔力が炸裂し、なのは自身も被害をこうむる捨て身の必殺技。
 切り札に近い高位攻撃魔法の連携。それぐらいしないとダイセイオーを止められない。
「零距離砲撃、それも直撃だ」
「あれなら、ちょっとはこたえたんちゃうか?」
 フェイトとはやてが打てた最良の一手に期待する。
 逆にこれでも大した損害を与えられないならもう、尽くせる手は無いかもしれない。そんな不安もあるからこそ、期待が強くなる。
「まだだよ!」
 しかし希望的な観測を真っ先に否定したのはなのは本人だった。
 魔力爆発による光が薄れ現れたダイセイオーは、既に次の攻撃準備を終えていた。

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