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緋色の平穏 Ep6『独善の剣2』

「確かにこれ以上の会話は無駄なようだ。ならば、私の正義によってヴィータ君の中にはこびる悪の意思を消し去ってあげよう」
「まだ好き勝手抜かしやがるか!」
 本郷はどこまでもアイアムジャスティスを崩さない。かなり高度な唯我独尊精神をお持ちのようだ。
「そして拓馬!」
「はい? もう何が言いたいのか聞かなくてもわかるけど聞いてやるよ」
「貴様のような邪悪は、塵も残さず成敗してやるから覚悟するがいい!」
 また右手で指差された。ことあるごとにポーズをつけたいのか。
「やれるもんならな」
「ふん!」
 本郷は自信ありげに含み笑いをして、指差した手を広げる。そしてそのまま横へ振り払い叫んだ。
「行くぞ、地獄に巣食う悪鬼め! 聖なる剣が貴様を切り裂く!」
 本郷の声に応え、上空に巨大な2つの平行した魔方陣が現れる。
 どうでもいいけど地獄に巣食う悪鬼って、俺に対してだけ無駄に表現豊かだな。
「あれは、召喚魔法か? それにしてもすげえ魔力だぞ」
「隙あり」
 予想外の魔力に驚くヴィータ。
 俺は無視して生成したナイフを本郷へと投げつける。
「空気すら読めないか。愚か者め」
 本郷は左手でシールド張り、ナイフを止めた。そこまで馬鹿じゃなかったか。
「敵が攻撃準備整うの待ってやるほど、俺は親切設計されてないんだよ」
 これだからきちんと教育されていない戦闘員はとかぶつぶつ呟きながらも、今度は右腕を天へとかざす。教育されてるから攻撃してるんだよ。
 魔方陣からいくつもの青い稲妻が走り、轟音が響きわたる。
 そして雷光の中、召喚された巨大なシルエットが姿を現した。
「なんだよ、あれ……」
「これが選ばれし者の偉大なる力だ」
 ヴィータが驚くのも無理はない。目測だが20メートルはありそうな体躯だ。
 雷光が収まってくるにつれ、影の正体がはっきりとしてくる。
 それは蒼い巨魁。
 尖角的で鎧のような青と黒の装甲。
 体に見合う、人など容易く握り潰せ、踏み潰せるだろうサイズの手足。
 頭部には西洋型の兜をかぶっているが、その額には黄金で匠な技巧をあしらった鎧武者に近いまびさしが輝く。
 テレビの中にのみ存在を許された鋼の巨人が、俺の前に姿を現した。
「名前は仮面ライダーのくせに、得物は巨大ロボットかよ」
 こいつをデバイスと呼ぶにはあまりに巨大で質量兵器チックだが、さしずめ搭乗型――ボーディングデバイスといったところか。
「とぅ!」
 本郷は小気味よく気合いを入れ、真上へと跳んだ。途中で身体が1度停止し、青い光に包まれ再浮上。巨大ロボの胸部まで上ったところで吸い込まれるように、内部へと消えた。
「ダイッセイッオォォォ!」
 巨大ロボの両目が煌めき、雄々しくファイティングポーズをとる。テンションアップで、やる気満々なご様子だ。
「大聖王だって?」
 あの蒼い鎧は聖王をイメージしていたのか。
 しかし肖像権もへったくれもないな。聖王協会に訴えられそうだ。
「か……かっこいい」
「ヴィーやん何言ってんの!?」
 それはどちらかというと俺がやるボケだよ。
「う、うるせぇよ!」
 本人も意図せず呟いてしまったのか、顔を赤くしながらぶっきらぼうにそっぽを向いた。ちょっとかわいいじゃない。
「優しき少女にはダイセイオーの荘厳さがわかるようだね」
 姿は見えずとも、本郷が褒められてにやけているのがよくわかる。
「見かけのかっこよさは認めてやろう」
「ふっ、悪鬼でもそれぐらいのセンスはあるんだな」
 皮肉めいた言い方だが、声は弾んでいる。相手が悪党でも褒められるのは嬉しいようだ。単純構造しているなぁ。
「だが、スーパーロボットは正義の味方が乗るもんだぜ」
「それはどういう意味だ?」
「言葉通りだよ、偽善者」
 本郷から返事が来なくなった。
 代わりにダイセイオーが俯きながら拳を握りしめる。
「おいおい、地雷踏んだんじゃねーか?」
「人前であんなかっこしてヒーローごっこだぜ? どうせコンプレックスの塊で、歩く地雷原さ」
 だからと言って自分から踏む道理はないか。
「人の心を踏みにじる貴様の悪魂! ここで消滅させてやる!」
 俺に向かい3度目の指差し、怒鳴られた。ワンパターンだし図星らしいや。
 ポーズだけ見ると悪党に宣戦布告しているみたいだが、理由が理由だからなぁ。
 それは開戦の合図でもあったらしい。
 ダイセイオーが腕を下ろすと、額部にあるまびさしの中心へ魔力が集中する。
「くるぞ!」
「だな」
 ヴィータが忠告し、俺は頷き2人は外側へ跳んだ。
「正義の鉄拳だ、ダイセイビーム!」
 直後収束された魔力砲が一筋の光になり、額から撃ち出される。
 ダイセイオーの体積からすれば小さなその光は、舗装されたアスファルトを砕き耕した。
 ヴィータはともかく、虚弱な俺だとこれだけでも直撃すれば撃墜は必至だろう。
 鉄拳って腕の連結を飛ばして殴るんじゃないのか。もしかしたらロケットパンチは装備されていないのかもしれない。
「ふん、ちょこまか逃げても俺のダイセイオーは必ず貴様を捕らえるぞ!」
「俺どころか、ヴィータも一緒くたじゃないか」
 被害者ごと亡き者にする気だよこいつ。
「それはっ。洗脳されし憐れな少女には愛の拳が必要なんだ!」
「正義の鉄拳と愛の拳は同一かよ」
 同じ攻撃で区分は無理だろう。しかも口ごもって考えてるし。
「う、うう、うるさい! 悪魔が正義の戦士に反論するな!」
 こいつ発言が秒単位でガキっぽくなってないか?
 半分照れ隠しだし、解釈のしようによってはツンデレにな……らないな。
「ダイセイスパーク」
 ダイセイオーの指から青い電流が迸り、俺へと落とされる。
 ビームレベルじゃないにせよ、舗装された地面は公園の砂場にスコップ刺したみたいに窪みが量産されていく。
「どうしたどうした。貴様は口だけか?」
「ああ、俺はな」
「ぬぅ!」
 本郷が調子に乗り出したところで、ダイセイオーの背後から小規模な爆発が連続して起きる。
「デカい図体してるから攻撃当てんのは簡単だな」
 振り返り敵を確認するダイセイオーへ、不敵な笑みを浮かべるヴィータ。
 たっぱは比べるまでもないが、空中で静止しているので目線の高さは同じだ。
「おら! まだまだいくぞ!」
 ヴィータの足元に三角形の魔法人が敷かれ、開いてる手を横に振り4つの鉄球を空中へ設置。
 4つのそれを空中へと解放し手に持ったハンマー型デバイス、グラーフアイゼンで殴りとばす。
 ヴィータが主力として使用する、射撃魔法シュワルベフリーゲンだ。
「ぬぐ、これでは拓馬に集中できない。ダイセイスパーク!」
 青い稲妻が鉄球を破壊せんとするが、ヴィータのそれには誘導性がある。
 稲光を抜けた鉄球、は各々にダイセイオーの胴体に突撃。
 ダイセイオーの装甲に、道路とよく似た亀裂とおうとつを生産する。
「人の貧弱な攻撃で支障をきたすような虚弱さは持ち合わせていないぞ!」
 球太郎の鉄壁加減に比べればだいぶ低装甲だが、いかんせんサイズ差が酷い。
 ちまちました攻撃など蚊が刺されたものってやつか。
「だったら潰れるまでぶっ叩く!」
「それより先に君は地を這うことになるがな」
 ヴィータがまたすぐ鉄球を生み出す。今度は生成を二度に分け、八個。
「あいつの装甲をぶち抜け!」
 一振り目で初めの四つを、返す打撃で残りを射出。
 続けてヴィータ自身も共に突貫する。
「ならばこちらはダイセイキャノン!」
 本郷もただ的になっているわけではない。
 ダイセイオーの肩部が展開し、小型の砲台が現れ砲撃を開始する。
 蒼い光球が、紅く光る鉄球を相殺していく。
 外れた光球がいくつか民家に落ちたが、家は無事だった。一応ヒーローらしくヴィータを殺さぬよう非殺傷に変更したようだ。
「カートリッジロード!」
 本郷が鉄球に気をとられていた間に、ヴィータはダイセイオーの後方へ。
 カートリッジが叩き出され、グラーフアイゼンが近接型のフォーム、ラケーテンフォルムにチェンジする。
 ハンマーから魔力噴射させて加速。ダイセイオーへとラケーテンハンマーによる一撃を見舞う。
「へがぁ」
 高速で魔力の圧縮された鋼鉄の塊が巨大ロボットの装甲を力任せにぶち割った。
 背後から衝撃を受けて、ダイセイオーはバランスを保とうとつんのめる。
 殴られた痕、へしゃげた装甲は鉄球時よりも大い。
「ぐうぅお。子供と思い容赦していれば、つけあがって……」
 嘘だ、墜とすためにキャノン砲連射してたじゃないか。すんごい負け惜しみくさいぞ。
 ゲームに負けたガキの言い訳を彷彿とさせるよ。このボタンがちゃんと反応しないとか。
「知るか、もう一発」
「馬鹿め。もう私の目を眩ます鉄球はないぞ。墜ちろ、ダイセイキャノン」
 光球が次々と射出された。ある程度軌道を予測し後は数押しだ。
 自らに届かせることなく直撃させんとヴィータを狙う。
≪Pferde≫
 ヴィータの足元に光が渦巻き瞬間的に加速。光球を避けながら急接近をかける。
「うぬれぇちょこまかと。当たるまで撃ち続けてやる!」
 本郷の祈りが届いたか、光の一つが紅き騎士を健闘むなしく捉えた。
 光球は被弾の証として眩い爆破光を発する。
「どうだ、これがダイセイオーの力だ!」
 連続で煮え湯を飲まされ鬱憤がたまっていたのか、本郷の喚起は叫びに近かった。
 「さーて、そいつはどうかな?」
 発光が和らぎ突き抜けるよう現れたのは、アイゼンに魔力を集中させながら高速回転を繰り返すヴィータ。
 猛るその姿に被弾による損傷はみられない。
「りゃあああ!」
「なにぃ!?」
 予想外の事態に動転した本郷は、またもラケーテンハンマーの直撃を許す。
「むぅおおおお己ええ!」
「叶といい、素質はあっても宝の持ち腐れだな」
「なんだと」
 本郷は思いだしたように頭部のカメラアイを俺へ向けたので、見せびらかすように手に持つナイフ数本を見せてやる。ここまでしてやれば俺がした、ヴィータへの援護にも気づくだろう。
「貴様、俺のダイセイキャノンにナイフをぶつけて鉄槌の騎士の盾になったのか」」
「そゆこと」
「二対一とは、卑劣漢めが!」
「巨大ロボット使っといてなに言ってんのさ」
 拳銃持ち出しておいて、こっちが鉄パイプ使ったら卑怯呼ばわりですか。
 そもそも挑んできたのもお前からだろうに。
「余所見すんな」
 ダイセイオーの間近に切迫するヴィータが怒声をあげる。
 引き付け成功。しかしなんて集中力のない奴だ。
「ダイセイビーム!」
「遅せぇよ」

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