Previous Image
Next Image

info heading

info content


ヘッドライン



緋色の平穏 Ep6『独善の剣5』

 立ち上がる前に叩く。ヴィータの起こす行動はそれしかない。
「ガアアア」
 それを阻止せんとライオンとゴリラが立ちふさがる。
 百獣の王が繰り出す前足をものともせず屈んで潜り抜け、アイゼンで顎を打ち上げる。
 後ろから唸る豪腕も、テレフォンパンチのため、ヴィータにはかすりもしない。
 どころかお返しと言わんばかりに、ゴリラの眉間へ鉄槌が金属音を響かせる。
 バランスを取り戻したライオンがヴィータを噛み砕かんと口を広げるが、消化の悪そうな鉄製のミートボールで餌付けさせられた。「どけえ!」
 どちらも、相手になっていないが、おそらくわざとだ。
 力で圧倒しているヴィータが前へ進めていないのが、その証明となっている。
 ヴィータが足止めをくらっているうちにダイセイオーは立ち上がる。
 割れた装甲が剥がれ落ち、今やフェイス以外も色々オープンしてしまっていた。
 千切れたケーブルからは火花が散り、見るからに私はもう限界ですと訴えている。
 まさにに満身創痍だ。
 そこへダイセイオーより高く飛びたがった鳥が火球を吐き出す時と同じように、長いくちばしを開き、光を浴びせかける。
 焼き尽くす“火”ではなく、暖めるような“陽”。
 照らされるダイセイオーの装甲が修復されていく。
 光が途切れると万全ではないが、戦闘可能領域までは回復を終えていた。
「復活しやがったのか! ちくしょう!」
 かなりの魔力を注ぎ込み倒したはずの相手が予期せぬ乱入から復活したのだ、ヴィータが悪態をつくのも致し方ない。
「皆、集まれ。今こそダイセイオーの真の力を見せる時だ!」
 本郷が叫ぶと、ライオンとゴリラがヴィータとの戦闘を中断。ダイセイオーへと駆けていく。
 嫌な予感がする。嫌な予感しかしない。
 ヴィータもすぐ後を追うが、鳥が大きく羽ばたくと暴風で形成された渦が生まれる。
 それがヴィータへ襲いかかり、前進を妨げた。
 せめてここからでもと、シュワルベフリーゲンを使用するが、同じく旋風により誘導コースを強制変更させられる。
 集まった三機は浮かぶように空へ飛び上がった。
 ライオンとゴリラがそれぞれに分割し複雑に変形。
 ライオンは顔が胸部の中心へ、残りはオーバーフェイスと胴体への追加アーマーに。
 コングは漆黒の強靭な手足へと変貌。
 最後に遅れて合流した鳥が、羽ばたいていた翼を固定し背中へとドッキングされた。
「次元の平和護るため、四つの魂を一つに合わせ! 聖なる光で闇を消し去る! 聖帝合体グレートダイセイオォォォォ!」
 予定調和に、窮地へ陥る合体劇を見せられた。
「次元の王たる我の逆鱗を恐れぬのならば、かかってくるがいい!」
 おまけに決め台詞まで加えられたよ。
 おかげで休めたから、だいぶ視界もクリアーになったけど。
「復活だけじゃなく、合体までしやがったのか」
「三割がこんな形で実現するとはなあ」
 ライオンアタックされるまで、この展開は思考の外にいたよ。
 合体後が合体前より弱いとも思えない。ひのきの棒で勇者の鎧を破壊しろってか。
「冥府に巣食う悪魔よ、真の戦いはこれからだ」
 あくまでも倒す目標は俺らしく、やはり指を差された。
 半泣き野郎が、他力本願の復活でここまで調子に乗りなおせるものか。
「まずったな」
 やはりヴィータにギガントフォルムを使用させたのは失敗だったようだ。
 使わせていなくても、あれを倒せる魔力が残っていたかと聞かれると、無いと答えるが。
「それでもやるしかねぇだろ」
「ああ、だから俺がやる」
 俺は真っ直ぐにダイセイオーへと歩みだす。
 ヴィータがすぐ俺に走りより制止をかけるが、知ったことじゃあない。
「そんな腕で何するってんだよ! ただでさえお前はBランク程度しかねえんだから黙って」
「黙るのはお前だ」
 俺は“折れた右腕で”ヴィータの首を掴んだ。
 力はこめていないので苦しくはないはずだが、驚愕とプレッシャーを与えるには十分だろう。
「腕が……」
「腕ぐらいどうとでもなる。BだのCだの些末なことを、俺の鬼札は魔力でもレアスキルでもないんだよ」
 掴んだ腕を放してまた歩き出す。
「だったらやってみせろよ、ペテン師」
「指をくわえて見てろ、騎士」
 ヴィータの横を通り過ぎ、ダイセイオーを正面から見据えるように立つ。
 こうしてみるとやはり大きい。合体したことでサイズアップしているので尚更だ。
「作戦会議は終わりか、卑しき闇の住人よ」
「待ってくれたのかい? 意外に親切じゃないか」
「貴様達の策略くらいで沈むグレートダイセイオーではないからな!」
 パワーアップしてすっかり調子を取り戻したらしい。わかりやすい奴だ。
 だからこそ、俺は圧倒的な戦力差があっても、勝利を奪いにいけるのだけども。
「達? お前がこれから戦うのは、俺一人だ」
「なにをバカな、狂ったか。貴様一人で何ができるというのだ?」
「元々狂ってるさ。それに、俺一人だろうがお前には勝てる」
「クハハハハハハ! いいだろう。貴様にグレートダイセイオーを、正義の恐ろしさを教育してやる!」
 勝利の確信でもしたのか、たいそうな嘲笑じゃないか。
 何分後に無味乾燥してくれるかな?
 ああでも、俺と遊んだ奴は大多数がメンタル方面に湿った炎を燃やしてくれるけど。
 矛盾していると見せかけて、やっぱりしている。
「ダイセイオー、お前も俺の平穏の礎になってもらうぜ」
 サシでの戦闘開始数分で、建物がいくつか瓦礫に変わってくれた。
 何もなくなりなどしない、形が変わっていくだけとしても、こいつはいささか急変ではないだろうか?
 “セイテイスクリューナックル”だったか。ダイセイオーの両手が高速回転し、魔力粒子をなびかせながら発射され、一軒家を粉砕した。
 拳から後数メートル近ければ、俺は赤黒いミンチになっていただろう。
 地面に突き刺さった手は、指からジェット噴射が起きて再び腕へと結合される。
 あるんじゃないか、ロケットパンチ。やっぱスーパーロボットといえばこれだろう。
「素晴らしいパワーだぞ、グレートダイセイオー!」
「正義のヒーローが民家を大破させて喜ぶなよ。引くって」
 ドン引きはもっと前からしているので、これ以上マイナスが加算、プラスが減算されても、たいそうな変化は期待できないのが実情だけど。
「そのような口車にはのらんぞ。この空間での破壊は外界に影響しない。周りの被害を心配せずに戦えるフィールドなのだからな」
「俺は破壊されちゃいないぜ?」
「どっちにしろ次で終わりだ! セイテイサンダァァ!」
 ダイセイオーの両拳に電流が集まり青い光が弾けた。
 スウィンダラーが魔力を検知し、警告を送る。見ればわかるって。
 やがて雷は両腕を包み、ダイセイオーが閃光の塊二つを突き出すことにより、発射シークエンスは完了された。
「消し飛べ!」
「ごめんこうむる」
 迫りくるは竜巻状に構成された雷光。
 俺が飛翔すると、後ろの瓦礫は燃えて分解。粉末になった。
 足元数十センチを通過されると、騒音公害に認定できるよ。家の倒壊音の比ではない。
 雷の空気を裂く音を間近でやられるとこんなことになるのか。
 念のためスウィンダラーで鼓膜を無理やり閉じなければ、聴覚が破壊されていたかもしれない。
 別方向に恐ろしい攻撃だった。
 口から音波タイプの技なら、鼓膜破壊とかぶせて口撃とか上手いこと言えたのに。
「なんだ、もう新技はネタ切れか?」
「そんなわけが……」
 ダイセイオーが腕を下ろし胸を軽く反らすと、デコ飾りに魔力が集まる。またあれか。
「ないだろう! セイテイブラスター!」
 収束時間が短縮し、魔力密度が向上されて橙色から深紅に変色した魔力砲。チャージ短縮のエクセリオンバスターって喩えがしっくりくる。
 俺が飛んだまま逃げるとレーザーのように隣のビルを分断し、追尾してきた。
 追いかけっこする俺と、ごんぶとレーザーメスの距離は数メートルくらいで、猫と鼠の仁義無きリアルでファンタジーじゃないのが始まった。
「おいおい、男のけつを追っかけまわすってどうよ?」
 ノンケでも食っちゃうタイプではなさそうなので、後ろの貞操さんがクライシスじゃないのが救いだな。
 こっちの初めては円にも捧げる気はないよ。前もだけどさ。
「のがさんぞぉ、悪臭漂う悪魂ごと燃やし尽くすのだ!」
 こいつが言うと、臭いのか悪党の臭いかよくわからん。
 ごんぶとさんは、ジリジリと俺に詰め寄り、一秒遅れで俺がいた場所を通過する。
 ビルの切断も三つ目に入った。
「壮観に壮快だ」
 間違っても爽快ではない。
 それに、熱が近すぎて爪先から煙りあがってるんですけど。
「ぐぬぬぬぬ、ちぃ!」
「残念、惜しかったのにな」
 遂にごんぶとが爪先を直射しそうになったところで、ラストオーダーしたらしい。怨恨のよく伝わる、忌々しそうな舌打ちをされた。
 三つ目のビルはしっかり泣き別れになったので、キリが良いといえば良いじゃないか。

[カテゴリ単位の記事]

コメントを残す

サブコンテンツ

このページの先頭へ