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緋色の平穏 Ep8『道歩む者、術(すべ)操る者6』

 エロゲーもびっくりなエロい虐めを受けてのパシリ。
 輪廻さんが、「ちゃんと買ってこれれば下の脱衣も検討しよう」とか言い出したので、買ってくるまでにちゃんと服を着ておくように釘を刺して外へ出た。
 あの人は美羽がいると高飛車だけど大人として模範的な態度をとるんだけど、いないとよく怠けている。
 近くのコンビニへ向かったら運悪く改装休業していたので、少し離れたスーパーで予備も含めて使い捨てライターを三本購入。
 途中、母親連れの幼女を発見しついつい後姿を追いかけていたが、花火を楽しむ美羽の姿を妄想し誘惑を断ち切った。なんて仕事熱心なんだ、俺。
 それにしても輪廻さんは、美羽だけじゃなく俺達三人も幼い頃から面倒を見ている。特に俺と鏡は両親がいないので、最も身近な大人であり、保護者となっていた。
 だからこそ受けてきた影響も強い。俺はサボり癖が伝染していたし、鏡のブレーキのネジを外した行動力は、輪廻さんの狂乱したような生き方を通じて、より暴走度合いを増している。
 家族と過ごす時間が多いため、まだ触発されていない部類だろう修一ですらも、虚数刃を発揮しての瞬発力は輪廻さん譲りだ。
 美羽は輪廻さんの悪い部分が似ませんようにと、切実に願う。
「否定したいけど、俺に人生の楽しみ方を教えてくれたのは、輪廻さんだったよな」
 昔の俺はただ、生きるために感覚を磨いていけばいいと思っていた。だけどあの人は違うと、それだけでは足りないと否定したのだ。
 ある日、輪廻さんは俺へ「君はもっと人生に余裕を持って生きるべきだよ」と、悟らせるように告げた。
 薄く研ぎ澄ましすぎた刃は、案外脆く砕けてしまう。磐石にと考え固めすぎた建物は、融通が利かず強い地震が来てしまえば倒壊すると。
 生きるためにと思っていた研磨は、俺自身に与える負担が大き過ぎた。だけど自分で自分の破滅に自覚がない。
 輪廻さんは出会った当初から俺の抱える爆弾に気付いていたんだ。きっと俺があの隊長と戦い敗北しかけていた意味を、輪廻さんだけが分かっていたのだろう。
 だけど数年であれ自分の生き方に成果を得ていた俺は、輪廻さんの忠告の本質を理解できていなかったため、行動理念を曲げることは無かった。
 それから少し後だ、輪廻さんが全裸になったのは。きっと口で言ってもわからない俺に、フリーダムな生き方を見せたかったのだろう。俺はあれで反面教師という言葉の意味を理解してしまったのだが。
 ともあれ理解不能な精神性への探究心を理由に、輪廻さんへの興味は強まっていた。
 そう、だから輪廻さんの全裸は、俺への教えであるのだ。決して子供で性を理解できていなかった俺に、全裸を見せて反応を楽しんでいたわけではなく、崇高な親心が存在していたのだろう……無理あるな。
 なんとか人間の持つ機能、思い出の美化を発動させてトラウマブレイクに努めてみたが、それで誤魔化しきれる変態度数ではなかった。俺は他人を騙せても、自分に嘘を吐つかないことを信条としているし。
「思い出の美化計画、失敗」
 うーむ、どうすれば輪廻さんのオパーイトラウマを和らげられるだろうか?
 これでも意外と輪廻さんのオパーイは精神的にキているのだ。
 同じオパーイでも、さまるさんのオパーイと輪廻さんのオパーイでは、オパーイセンサーで感じるものが違う。輪廻さんのオパーイは存在を認めたくないとでも言えばいいか。あのオパーイはハイレベルオパーイだが、どれだけ見ても腕を上下に振れない。
 経験は無いが、夜中に目が覚めて偶然自分の両親がギシアンやってるの目撃して萎えるのと似たようなものだと思う。
 考えれば考えるほどテンション下がるなぁ。こうなったら輪廻さんオパーイへの思考を無理矢理止めて、時間による風化を待つしかないか。
 脳内をオパーイに汚染されながらアジトを目指していると、前方の十字路にある自動販売機が目に付いた。そう言えばコーヒー牛乳横取りされているので、喉が渇いている。
 ライター渡すまで我慢しようか、でもまた横暴な嫌がらせを受けてタイミングを外されてしまうかもしれないし。
 自動販売機に着くまで逡巡した末、缶コーヒーを購入して備え付けられたゴミ箱もあるので、その場で飲み始める。他に好きな飲み物もあったが、コーヒー牛乳に未練が残っていたみたいで、つい近いものを買ってしまった。近いだけで、味は全然違うのだが。
「……ん?」
 そうして自販機の横で足を止めていたら、角を曲がってきた通行人達と目が合う。その人物があまりに意外だったので、思わず声を出してしまった。
「暁拓馬か」
「こんにちはでず」
 時空管理局で誰より誇り高い騎士シグナムと、我が学園で誰よりヘタレな学生藤堂という、あまりに対照的な組み合わせだ。
 藤堂は肩に剣道袋を提げている。藤堂の肩幅が広いせいで、竹刀が通常より細く見えてしまう。これで堂々と歩いてさえいれば、武道家として周りが道を開けるだろう、威圧感が持てるのに。
「藤堂も暁と知り合いなのか?」
「はい。同級ぜいで、この前たずけてもらったんでず」
「お前は相変わらず誰かに助けれているのだな。ある意味運が良いと言えるのかもしれんが」
「ずみまぜん……」
 藤堂の態度が誰にでも怯えてよそよそしいので、シグナムさんとどれくらい親しいのか掴みにくい。様子見するより、直接聞いたほうが早そうだ。
「シグナムさんこそ、どうして藤堂と?」
「偶然不良に絡まれていたのを見かけてな、私もお前と同じだ。それから私が講師をしている剣道場を紹介して、今は教え子の一人となっている」
「あ、あう、ずみまぜん」
「藤堂、ここは謝る部分ではないぞ」
「あわ、あう」
 シグナムさんは淡々とこれまでのいきさつを簡潔に語る。藤堂のがたいに似合わない軟弱さが、シグナムさんを放っておかせなかったのか。
 藤堂が剣道部だという情報は入ってないので、初めはシグナムさんが説教して見学でもさせたのだろう。けど強制するような人とも思えない、ならば道場に通っているのは自分の意思でのはずだ。
「けど、自分を変えようとしているから剣道をやっているのでしょう? それは大したものじゃないですか」
「え? あ、あの、ぞの」
「そうだな。私もその努力は認めている」
 自分を変えようとはしているのなら、上手くいけば三奇人が減るかもしれないし、応援はしてやる。応援するだけだが。
 そして、応援された藤堂はまた言葉に詰まり、あたふたと首を横に振って否定しているようだ。
 怒られた時の対応は出来ていても、逆に褒められるのにも慣れていないから、どう対応すればいいかわからないのだろう。
「それじゃ、俺はこれで」
 飲み干したコーヒー缶をゴミ箱へ投入して、延期していた帰宅行動を再開する。
「私達もこっちでな」
 シグナムさん達も同方向だったみたいで、俺を先頭に二人が付いてきている様に見える。やたら美人の外国人と歩く岩石の美女と野獣ペアに俺だけが平々凡々な身なりで混ざってしまった。
 他の通行人の多くが、こちらをちら一見していく。鏡と一緒に行動するみたいな視線の集まりだなぁ。
 不幸中の幸いと言うべきか、シグナムさんには一度真紅恋馬についての人格的な質問がしたかったので、道中の会話には困らなかった。
 藤堂も、あそこまでアクティブになれとは言わないが、あの強引さは見習うべきだなとは、シグナムさんの弁である。
「あう、あの僕、僕ここで」
「今日はどこかに寄っていくのか?」
「ちょ、ちょっと」
 主語が無いが、別の方向へ振り向く仕草も含めて言いたい内容は伝わったようで、シグナムさんは「それでは、ちゃんとマッサージをしておくように」と告げ、藤堂は深くお辞儀をしてから去っていく、教師と教え子らしい別れ方だった。

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