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緋色の平穏 Ep9『偶像崇拝シンメトリー13』

 今日は朝からお外に出かけた。
 いつもなら朝は勉強してるんだけど、それも後回し。それより確かめないといけないことがあるから。
 おきてからすぐテレビをつけて、ニュースをみた。いつもなら耶徒音ちゃんが人を殺した話が流れる。耶徒音ちゃんの殺人はとても注目されてるから、それだけ流される時間も長い。
 それが今日は無かった。耶徒音ちゃんとちゅーをした後、二人の人を殺したと教えてくれたのに、全然ほうえいされてない。失敗もしてないのに、これは何かある。
 それに昨日のニュースでも、新しく死んだ人の話が無かった。こっちは耶徒音ちゃんが逃げるとちゅうに、昨日のおまわりさんが死にかけていた人を見つけて、助けたんじゃないかなと思ってた。それならおまわりさんがお家にやって来た説明にもなるから。
 けれど、それも違ってたのかもしれない。わたしが気がついてないだけで、何か大きな見落としてる穴があるんじゃないかな。
 このふしぎはもしかすると、そのまま耶徒音ちゃんを飲みこんでしまうかもしれない。このままじゃだめなんだ。調さしようと、そう決めた。
 耶徒音ちゃんがこれまで人を殺した場所は、だいたいわかってる。順番にそこへ行ってみて何か手がかりがないか調べてみよう。
 今日はたくさん歩くと思うから、朝ごはんをしっかり食べないと。それから、必要そうな物はリュックに入れて、暑いから水とうも忘れないようにしてから、さぁ出発! ……したのはいいんだけど、知らない所だったり思っていたより遠かったり。目的地にとうちゃくするだけでも、一苦ろうだった。
 毎回耶徒音ちゃんはよくあの短い時間で、これだけ移動して人まで殺して帰ってこれるなぁ。殺人鬼も楽じゃないんだね。
 耶徒音ちゃんの殺人現場は、思っていたより何もなかった。手がかりも、心を動かす何かも。
 ここで耶徒音ちゃんが人を殺したんだなと、頭ではそう考える。でも、実感はわいてこない。どこか現実で起きたものとは思いにくいから。わたしがこれまで見てきたのは、殺した人の血だけだったし。
 おまわりさんたちが先にあやしいものを持ちさっているから、人が死んだと連想できるような物はない。町を歩く人も、何にもわかってないように通り過ぎていく。
 人が殺されたはずのところでも、誰も恐がる様子なんてなくて。皆ニュースで観ていて、耶徒音ちゃんがどれだけ恐ろしいしりあるきらーか知ってるはずなのに、自分には関係ないと思ってるんだ。耶徒音ちゃんは家族以外ならだれでも選ばず平気で殺すのに。みーんな能天気だなあ。
 わかってない人たちの中で、わたしだけが困ってた。落とし穴が見つけられない。ぱっと見てあやしそうな何かは見当たらないし、あれこれうたがってかかると、そこらに落ちてる小石まで重要なしょうこ品じゃないかなって思えてくる。
 名たんてーさんはいいな、毎回どこかにはんにんにつながる糸口が落ちてて、それが怪しいと思ったら絶対後々しょうこになるんだもん。
 何度見わたしてもわたしが望むような、お話を前進させる物体はありそうもない。次もそのまた次も、ヒントの発見はないままに、時間だけが先へと進んでく。
 まだまだ回ってないポイントは残っているので、あきらめたりはしないけど、お昼の時間が近くなってきた。ご飯までには一度帰らないと、おじいちゃんとおばあちゃんを心配させちゃう。でも後もう一つ調べるくらいなら、何とかお昼ご飯には間に合いそうだし……。
 どちらにしようかなっと、移動に使ってる自転車のかぎを開けていたら、お家から電話がかかってきた。これはもしもの時にだけ使ってる、けいたい電話だ。わたしにはまだまだけいたいは早いから、家族とのれんらく以外には使っちゃだめと言われてる。ちなみにお家から出ない子と思われてるから、耶徒音ちゃんはけいたい電話を持ってない。本当は昨日の耶徒音ちゃん探しでもフェイトちゃんにけいたいの番号を教えたかったけど、がまんしたんだよ。
「もしもし、しとねだよ」
「ああ、しとねや。今はどこにいるんだい?」
 電話の向こうでわたしに話しかけてるのは、おじいちゃんだった。
 そもそもけいたい電話の活やくがあるのは、急ぎのご用事がある時だけ。
「友達のお家で遊んでるよ」
 今日初めて来ている地名を出したらおじいちゃんの心配をふやすだけだ。だからうそをついた。友達のお家ならいくつかあるし、帰りにかかるきょりや時間もごまかせるから。
「そうかい。お客さんが来ていてな、しとねと話がしたいそうなんだ。悪いんじゃが、帰ってきておくれ」
 それは誰? なんて聞くまでもない。友達なら聞かなくてもおじいちゃんから名前を教えてくれる。うぅん、わたしが知ってる人なら例外なく先に言ってくれてた。
 それが言えない人で、けいたい電話を使っても呼びもどすお客さんなんて、今の置かれてるじょうきょうならいやでもわかる――おまわりさんだ。
「うん、わかったよ。すぐお家に帰るね」
「ああ、すまんね。待ってるよ」
 それだけの会話でお話は終わり。けいたい電話はぱたりと二つに重なって、わたしのポケットに帰ってった。
 そしてわたしは自転車にまたがって、力いっぱいペダルに体重をかけてお家に向かい全速力で進みだす。
 早い、早すぎるよ。こっちはまだ何一つとして、おまわりさんと戦うそうびはととのってないのに。
 おそらく、耶徒音ちゃんがおまわりさんをおそったから、今度こそ足がついちゃったんだ。結局昨日の行動はうら目になってる。そしてわたしがカバーしないといけないのに、間に合ってない。ごめんね、耶徒音ちゃん。
 そうだ、耶徒音ちゃんだ。おまわりさんはどうやったのかわからないけど、耶徒音ちゃんを見つけてる。ならお家でかくれてる耶徒音ちゃんも、今度こそ見つかってしまうかもしれない。
「そんなの駄目!」
 気がつくと大声を出していた。そうしないと恐いのにたえられないから。ぎゅっとハンドルを握った指が白くなる。心ばかりが前に出て、中々進んでるように思えない。自転車のスピードがじれったい。
 耶徒音ちゃんはわたしとずっと二人で生きるんだ。二人で幸せになって、昔みたいにニコニコ笑って生きる。
 許さないから。耶徒音ちゃんとわたしの幸せをじゃまする人は誰も許してあげない!
 行くときも急いでたつもりだけど、帰ってくる方がずっと焦って家の前まで戻ってきた。
 自転車をおりたら、すぐに走る。カギをかけたのかわからないけど、そんなのは後でたしかめればいいや。エレベーターを待つ時間もおしいから、階段をかけのぼった。
 頭の中で、おまわりさんに捕まって泣いている耶徒音ちゃんが浮かんでくる。かきむしるように想像をこわしても、ばらばらにしたすぐ下にも、同じ想像が待っていた。くりかえしくりかえしで、頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。やめてわたしの耶徒音ちゃんをとらないでいじめないでこわさないで。
 急いで急いで。
 耶徒音ちゃんが助けを求めてなみだを流してる。そんなわけない!
 早く、階段を一段とばしで。
 耶徒音ちゃんのとなりには昨日のおまわりさんが。うそだよ今のはうそだから。
 ああもっと足が速ければいのに。
 耶徒音ちゃんがうつむいたり首をふったりして、ほっぺたを伝うしずくがとびちる。耶徒音ちゃんは上手にかくれてるに決まってるよ!
 足が重い。
 息が苦しい。
 心が痛い。
 心が重い。
 息が痛い。
 足が苦しい。
 耶徒音ちゃんが重い。
 耶徒音ちゃんが苦しい。
 耶徒音ちゃんが痛い。
 耶徒音ちゃんの手に銀色のてじょうが辞めてそんなのはただの想像でそんなことより早く早く早く階段フロアまた階段早くやだよ耶徒音ちゃん行かないで想像でも私を置いていかないでいくわけないよこれは想像で現実の耶徒音ちゃんはつかまってないもんつかまってないよねかくれんぼしてて足つまづいて痛い耶徒音ちゃんも痛いだって腕をひっぱられて耶徒音ちゃんがパトカーに連れてもちがうちがうから耶徒音ちゃんは痛くなくてわたしは痛いけどすぐに立ってまた走って階段にぶつけたひざの少し下が青いけど心は真っ赤で耶徒音ちゃんの服は真っ赤っかだよね階段お家は何色フロアおまわりさんは何色私の皆赤色住んでる階だ耶徒音ちゃんが皆殺しちゃうからフロアを抜けてろうかを走ってる私と耶徒音ちゃん以外は皆死んじゃうもうすぐだよもうすぐわたしが行くからそうしたら殺しちゃおう逃げようどっちでもいいからどっちもいいからつかまってないよねげんかん走ってもうすぐそこお部屋の中にどこどこどこどこどこどこどこどこどこ耶徒音ちゃん耶徒音ちゃん耶徒音ちゃん耶徒音ちゃん耶徒音ちゃん耶徒音ちゃん耶徒音ちゃん耶徒音ちゃん耶徒音ちゃん耶徒音ちゃん
「ああ、そんなところにいたんだね、耶徒音ちゃん」

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