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緋色の断片 『ペテン師の最強論講座2』

「ずるい。問題出したのはたっ君なのに!」
「大人の世界ではねフェイト、質問全てに回答があるとは限らないんだ」
 またなんか滅茶苦茶なこと言って煙に巻こうとしている。でもここは退けないところだ。
「初めに質問は答えてくれるって言ったんだから、それは通じないよ」
「俺ってペテン師だし?」
 ここでたっ君本来の人間性を持ち出された。ある意味身も蓋もない発言だ。
「酷いよ。私はたっ君のことが知りたいだけなのに」
「ただじゃ教えられんと言ったが、教えないとも言ってないぞ」
「どうすれば教えてくれるの?」
 たっ君が私にお金を払わせるとは思えない。だからまず、たっ君に要求を聞いてみた。
「お兄さんのお膝の上に座ってくれたら、教えたげる」
「膝の上に座っ! どうしてそうなるの!?」
 それは、あまりに予想外の要求だった。ただし嫌がらせよりも弄ぶことが目的みたいだけど。
「嫌なら別にいいよ。俺はアースラに移動するだけさ」
 そう言ってたっ君は迷わず立ち上がろうとする。
「あ、えと、待って!」
「さぁ、どうするんだい?」
 本当にずるい。
 私がどれだけ答えを知りたいかわかっていて、強制ではなく選択肢を与えた。
 自分の顔が熱を持っていくのがわかる。うぅ、こうやって私はたっ君の好きなように遊ばれていくのはわかっているのに、どうして抵抗できないんだろう?
「極楽極楽」
「…………たっ君のエッチ」
「えー。だって至極の抱き心地ですよ?」
「全然関係ないし、そういうこと言わないで!」
「褒めてるだけなのになぁ」
 褒め方と、褒めてる内容に問題があるから。
 私はたっ君の腕の中でもじもじしている。気持ち悪いことか恐いとかじゃなくて、純粋に恥ずかしい。きっと耳まで真っ赤だ。
 たっ君は反応を見て楽しんでるだとわかっているのに。
 でも、私が本気で逃げ出すようなことはしない。ちゃんとここまでと線引きをしているのがわかる。
 だからこそ脱出もできないのだけど。
「もういいかな。元に戻って続きをしよう?」
 今だって顔だけをたっ君に向けて話している。ずっとこうだと疲れるし、早く普通に座りなおしたい。
「俺は抱いたままするつもりだけど」
ちょっとだけだって言ったのに、いとも容易くまた嘘を吐かれたみたいだ。
「このままだと話しづらいよ」
「その分俺が饒舌に話すから。それで、何の話だっけ?」
 饒舌が一歩目から躓いてる。
「たっ君がどうやってルートを選択しているかだよ」
「ああそうだったね。じゃあここで問題です」
「答えたから! そしてこうなったの」
 もしかしてこのまま話を流してしまうつもりだろうか? それはあまりにも酷すぎる。
「円さんにもこういうことしてるの?」
「できるわけない。死にたくない」
「それでどうして私にはするのかな……」
「ちまいから」
 たっ君にとって私は、ぬいぐるみや小さいアルフと変わらない扱いらしい。聞かなければよかった。
「冗談だよ。かわいいなぁもう! きっとフェイトは俺を癒すために生まれてきたんだ」
「その役目は円さんに譲るから」
「だから死にたくないって」
 どうしてそこで生死に関わるのか、私には理解できないし、したくもない。
「しょうがないな。本題に戻るよ」
「どうしょうがないのかわからないけど、そうして欲しいな」
 たっ君に話を進めてもらうには、円さんを出せばいいらしい。それでも離してもらえないのは、きっとたっ君がたっ君だからだ。
「フェイト、俺はね別にレアスキルを使って未来を覗いてるわけじゃない」
「わかってるよ。それでもたっ君には私が見えない何か見えているような気がしてならないんだ」
「そいつは単にフェイトの視野が狭いだけさ。それに俺は、たとえ未来を見通せる奴が相手でも勝てる戦い方をしているつもりだよ」
 たっ君の言葉が軽く胸に刺さる。私に見えないのは私が未熟だから。
 それだけじゃない、未来予知は先のルートが相手だけに見れるということ。
 たっ君が相手より高い魔力持っているならまだしも、むしろ魔導師としてはとても強い制約がある。
 そんなことをされて勝てる方法など、私には思いつかない。
「簡単さ、相手のルートも俺が決めてしまえばいい。そうすれば相手がどんな力を持っていようが関係ない」
 それはつまり相手を操ってしまえということ。
 さも当然だろうと言わんばかりにたっ君は言ってのけた。
「それが出来るなら誰も苦労はしないよ」
「苦労はするけど俺はできるのさ」
 そんなのはもう未来を覗くスキルと同じくらいに、普通の技術じゃない。もし存在するなら確実にレアスキル認定されるはずだ。
「なんのレアスキルもなしに人の操作なんて、できるわけがないよ」
「そうやってレアスキルだの魔力だのに頼ってる間は見つけられないだろうね」
 次元世界に魔導師がどれくらいいるのかはわからないけれど、戦闘でレアスキルと魔力の重要性を否定する人はたっ君だけだと思う。
 これもやっぱり、常人の感性からかけ離れて生きてきた、たっ君だからこその発想なのだろうけど。
「たっ君って物事を根底から覆すの好きだよね」
「弱者が強者と同じことして勝てるわけないだろう? 弱いからこそ深く知恵を絞るのさ」
 人は足りないものがあれば別のことでそれを補おうとする。たっ君は今まで自分自身は魔力を持てずに、他の技術を磨いてきた。そうか、だから過剰な力を否定したがるんだ。
 必要以上の力は、たっ君の感性を鈍らせると考えているようだった。
「まだ引っかかるところはあるけど、なんとなくはわかったかな」
「なら次のステップだ。フェイトは“ジョハリの窓”って知ってる?」
「ううん、聞いたこともないよ」
 私の返事を聞いて拓馬はそのままジョハリの窓を説明してくれる。
 特に私への反応がないところをみると、どうやら知らないことを前提に聞いたらしい。
「小学四年生にする話でもないんだけどね。自己ってのは四つのタイプに分類できるんだ……」
 自分も他人も知る自分。
 自分は知っていて、他人は知らない自分。
 他人は知っていて、自分は知らない自分。
 自分も他人も知らない未知の自分。
 口頭だけで一度に言われてちょっと混乱したけれど、この四つが自分という人間を区分する種類らしい。
「もしかして、戦闘中にこれで相手を分析してるの?」
「そゆこと。もちろんこれは基本で、状況によってまた様々に変動する」
 視野が狭いの意味が分かりかけてきた。
 私が戦いで相手の力を計っているなら、たっ君はさらに追加して人間性まで計っている。
 しかもそれを使えるもの使えないものに振り分け、実戦で活用しているのだから、同じ戦闘でも扱う情報量が桁違いだ。
「で、この四つのタイプそれぞれに大事な意味があるわけですよ」
「あの、たっ君?」
「なんだいフェイフェイ」
「この説明はまた今度でもいいかな?」
 予想だけど、これは始めるととても長い。それに言葉だけだと絶対に混乱する。
 ミーティングまではそんなに時間がないし、これはまたの機会に取っておいてもらおう。
「おっけー。ま、結局これを使ってやることは確実な予測と誘導なんだけどね」
「誘導? それが相手のレールを決めること?」
「叶のケースなら、あいつはすぐとどめを刺さずに相手をいたぶる癖があった。そういう奴は下手に反撃せずにダメージを受けたふりをすると、自分が優勢だと思いこみ攻撃も深い思考のない隙だらけなものになる」
 戦いの最中に相手の心の隙を見出して、つけ込む。
 いや、たっ君ならちょっとした癖だけでも、反撃の糸口にするかもしれない。
 さっきのジョハリの窓で例えるなら、自分は知っていて、他人は知らない自分だろうか。
 敵が自分の意思で攻撃していると思っていても、実はコントロールされている。
 もっと怖いのは――

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